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読んだ本の記録とメモ

荻原規子『RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧』

荻原規子『RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧』メモ

P125

彼にとっては、泉水子も馬も式神も、まとめて同じように接する相手なのかもしれなかった。人かどうかで区分して垣根を作らないのだ。そのおおらかさに気づくと、今まで怖がっていた自分は心が狭いように思えてきた。

 

P171

「あいつがだれもきらわないのは、無関心のせいよ。関心をこちらに引き止めるものがどれだけあるかって、ときどき自信なくすの。やっぱり醜いものね、人間同士は」

 

 P190

また、すがって泣く相手がいることにも心打たれた。泉水子自身は、そんなふうに泣いた経験がなかった。大成にも竹臣にもしたことがないーー記憶にないほど幼いころは別かもしれないが。

(ないのは当たり前かもしれない。わたしはまだ何ごとも、ぎりぎりまで努力したことがなかったからだ……)

 

P224

「どうしてそこまで節操のないまねができるんだ。あんたって人、何して生きているんだよ。まともな就職もしないで……」

「生活に不自由させたおぼえもないのに、言われることじゃないな。大事なものを大事にする生き方をして何が悪い。必要とされる場面にいるだけだよ、わたしは」  

 

 

P256

どこまでを分かち合えば、その人を友だちと呼べるのだろうと、泉水子は考えこんだ。たぶん、だれだって、洗いざらいをさらけだしてなどいないはずだ。隠し事がひとつもない間柄でないと、友人になれないなどということはないはずだ。

 

P267

(……他人に何かを期待しなくても、ひとりで気を取りなおすことくらいできる。すべて、わたしが自分でどうにかすることだった。どうしてくよくよすることしか知らなかっらんだろう。わたしはもともと、お山でひとりで遊べたのに。虹を見たり、星を見たりして、それだけで楽しくなることができたはずなのに)

何か今まで、ひどく基調が狂っていたとしか思えなかった。人と人の関係に悩むより先に、やっておくべきことがあったのに、泉水子は今日までとうとう気づかなかったのだ。

(自分自身の声を聞こう……だれがどう思っているかと、そればかり気にせずに)

雪政の考えは雪政のものであり、深行の考えは深行のものだった。真響にだって同じことが言える。他の人間の思惑に振りまわされてばかりではなく、それらとは別に、結局はひとりだということをふまえて、自分は何がしたいのかを考えていいのだと、泉水子は静かにかみしめた。

 

 

P295

「女の子なら、きれいになりたいと思うでしょう。けれども、化粧には別の意味もある。顔を彩ることはまじないに近いんだ。面をつけることも同じ効果だけど、人は顔がちがうとちがう境地になれるんだよ。ふだんはできないこともできるようになる。他人に見せる顔というのは、それほど大事なものなんだ」